【海女】獲るべきか、獲らざるべきか。それが問題だ。- To fish, or not to fish, that is the question.

2020/04/28 ブログ

【海女】獲るべきか、獲らざるべきか。それが問題だ。

 - To fish, or not to fish, that is the question.

 

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こんにちは、ゲストハウスAMARGE(アマージュ)オーナー兼、現役海女のリカコです。

 

表題の件、ウィリアム・シェイクスピア『ハムレット』の有名な文句、"To be, or not to be, that is the question.(生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ)" を文字ってみました(注:訳し方には諸説あります)。

 

現在、新型コロナウイルスの影響が一次産業にも影を落とし、特に高級な野菜や魚介類の価格が低迷または暴落し、私の暮らす漁師町においては伊勢海老やヒラメなどの価格が半値以下まで落ち込み、漁師たちは頭を抱えています。

 

そんな中、地元の刺し網漁の漁師たちは伊勢海老やヒラメなどの魚介類を獲る漁を辞めると決断しました。

かかる経費(船のガソリン代など)に対し売上が少なすぎるため、漁をすればするほど赤字になる為です。

 

また、本来であれば4月の後半からスタートする、私たち海女の醍醐味【アワビ漁】においても、5月半ばまで漁の延期が決まりました。

 

ここで問題なのが、一次産業の、つまり食料を供給する立場の人々が仕事を止めて良いのか、という点です。

 

漁師や海女など、漁業権により特別に海で漁をしそれを生業にする事を許された人々にとって、魚介類を採取しそれを国民に供給する事は「権利」であると同時に「義務」であると捉えることが出来ます。

 

私たちは人々の生活を支える土台になる産業に従事しているため、ここが止まってしまうと、その上に暮らす何千、何万という人々の生活が危うくなります。

 

しかし一方で、私たちは生き物の「命」を売って収入を得、生活をしています

 

そのため、緊急事態であるという事を理由に、彼らの命の値段を下げてまで食料として供給する事は果たして正しいのか、疑問を抱きます。

 

アワビなどのように年々漁獲量が減少している生き物たちなどは特に、単価が下がってしまうとどうしてもその分たくさん獲らなくては収入にならないと考えるようになり、それが乱獲の引き金になればいよいよアワビ絶滅の危険性が高まります。

海女として、漁業者として、今この時に

『獲るべきか、獲らざるべきか』

非常に悩ましい所です。

 

畜産業に従事している方々もきっと同じ思いなのではないでしょうか。

 

海女をしていると、豊漁の際の大きな喜びと同時に、生き物の命を頂く事に対する罪悪感を覚えます。

 

食料であり命である事を認識しているので、自分には彼らの命を頂戴する責任があると感じますし、自分たちの獲った貝や魚はしかるべき人に美味しく、ベストな状態で召し上がって頂きたいと考えます。

 

私たちは今この時世をどう生き抜くべきか、よくよく考えなければいけない。

一度立ち止まって考える、そういう時なのだろうと思います。